AIが作るOGPはなぜ切れる?──「1200×630の罠」とアイキャッチの落とし穴

webの仕組み

AIに「1200×630で」と頼んだのに、なぜ切れる?

「AIに『横1200×縦630pxで作って』と指定したのに、WordPressにアイキャッチとして入れたら上下が切れて文字が読めない」──そんな経験ありませんか?
実はこれ、AIでもWordPressでもなく、双方の構図の考え方が根本的に違うことが原因です。


1️⃣ AIは「構図」ではなく「キャンバス」を理解している

多くの画像生成AI(Stable Diffusion / DALL·E / Firefly など)は、もともと512×512の正方形構図で学習されています。
そのため「1200×630で」と言っても、AIは比率を完全に理解せず、正方形を横に広げた絵を描こうとします。

  • 中央にメイン要素(人物・文字)
  • 上下に余白のない「詰めた」構図
  • 比率変更は引き伸ばし処理で補完される

つまり、AIは「1200×630で描く」より「正方形を1200×630に見せかける」方に近い動きをします。
結果、文字や人物の上下が安全域なしで中央に集中してしまうのです。


2️⃣ WordPressは「中央トリミング」で切り出す

次にWordPress側。Cocoonなどのテーマでは、次のような設定が基本です:


set_post_thumbnail_size(1200, 630, true);

この第3引数のtrueが「中央基準で切り取る」という意味。 AIが正方形構図で出した画像をそのまま入れると、上下がバッサリ切られるのは当然の挙動なんです。

Cocoonはカード一覧やOGPでobject-fit: cover;を使うため、 「中央をズームして四角に合わせる」ような表示になります。
つまりAI構図 × WPトリミング = 中央拡大・上下欠け


3️⃣ そしてSNSが「さらに横長」を要求する

Facebook・X(旧Twitter)・Google Discover などのOGP仕様では、ほぼ共通して

推奨サイズ:1200×628px(中央基準・上下トリミング想定)

つまり、AIが正方形構図で描き、WordPressが中央を切り、SNSがさらに横長で再トリミング──
三重トリミング構造の完成です。

最終的にユーザーに見えるのは、原画の中央1/3程度。 文字が切れているのは当然なんですね。


4️⃣ 安全に見せるための設計手順

① AIプロンプトの工夫

「横長のWebバナー構図で、上下に余白を多めに取り、中央にテキストを配置してください」

AIは数値よりも「構図の言葉」を理解します。 「横長」「余白を取る」「中央に配置」を入れると比率が安定します。

② ImageMagickでトリミング補正

AIが出した正方形画像を、サーバーやローカルで一発修正:


convert input.png -resize 1200x630^ -gravity center -extent 1200x630 output.png

^ は拡大優先、-extentで余白を切り詰めて1200×630に中央合わせします。 この1行でDiscover向けOGPを量産可能。

③ 安全マージンを意識した文字配置

OGP安全マージン図(上下50px、左右100pxの安全域)
上下50px・左右100pxは“切れてもOKエリア”にするのが理想。

④ WordPress側はそのままでもOK

トリミングを無効化しても良いですが、Cocoonアップデートで再定義される可能性もあるため、作り手側で構図を合わせる方が安全です。


5️⃣ MUプラグインで自動補正する場合

どうしてもアップロード時に自動補正したい場合は、以下を /wp-content/mu-plugins/eyecatch-auto-crop.php に配置します。


<?php
/** * Plugin Name: Eyecatch Auto Crop * Description: アップロード画像を自動で1200x630に中央トリミング * Author: masaやん * Version: 1.0.0 */
add_filter('wp_handle_upload', function ($file) { $path = $file['file']; $info = getimagesize($path); if ($info && ($info[0] != 1200 || $info[1] != 630)) { $img = wp_get_image_editor($path); if (!is_wp_error($img)) { $img->resize(1200, 630, true); $img->save($path); } } return $file;
});

ただし、AIが正方形構図のまま文字を配置している場合は切れるため、 根本的な解決にはなりません。あくまで保険です。


6️⃣ 結論:「AIを責めるな、仕様を知れ」

AIは「絵を描く職人」、WordPressは「枠を作る職人」。 どちらも間違っていません。
ただし、間に立つ私たちが構図と比率のルールを理解して調整する必要があります。

WordPressは「横長に見せたい」、AIは「正方形で描きたい」。 ならば作り手が安全域を設計し、AIを素材生成の相棒として使うべきです。

AIは素材職人、人間は最終監督。
──これがアイキャッチを美しく見せる一番の近道です。

作者: masaやん / ver 1.0.0 / 検証環境: WordPress 6.7 + Cocoon 2.8.8

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